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序
私がここに『精神分析概説』として、この書
籍を贈呈することになったのは、今日までに既に公刊される諸多の
斯學叢書(『フヰスター著『精神分析の方法』』一九一〇年。レオ・カプラン著『精神分析法概論』一九一四年。
レギ、ヘスナール共著『神経病及精神病の精神分析』一九一四年。アドルフ・マイエル著『神経病者の精神分析』
一九一五年。ジユセツプせんがためではない。これは私が一九一六—七年及び一九一六—七年の一回の多期講義(聯
妻曰く、ウヰン大学での)において、醫師及醫師以外の一般男女聴講者に向って行つた、講話の忠實なる筆記で
ある。
本書が読者諸君に印象づけるすべての特質は、からした成立條件からして、自づから明白になるであろう。説明
において、科学的論述の冷静な態度を常に保持することは、私にとつては不可能であつた。講演者は、約二時間に
亙る講義の間、聴衆の注意を麻痺させないやうに、絶えず用心しなければならなかつた。各瞬間の効果を顧慮する
ことが、同一の事件を度々繰返し-
取扱ふことを餘儀なくさせた。例えば、一度は夢の解釋の各章下において、次に
は又神経病の諸問題に關聯して述べたが如きである。材料の羅列においても亦、二三の重要な題目、例えば無意識
の諸問題を、一個所で充分に説き盡すことが出来ずして、却つて諸所で繰返し取り上げて見ては、更に又その
知識を補充する必要のある、他の新らしき機会の来るまでは、再びそれを放棄しなければならなかつた。
これまで精神分析に關する文献を多く讀まれた諸君は、この『概説』においては、他書物で知ることの出来な
かつたやうな、もつと詳細な叙説を殆ど見出すことが無かつたであろう。しかし、著者は、材料の充實と豊富とを
期する必要に迫られて、一二の章下(苦悶の病原や、ヒステリー性妄想に關する)で、これまでまだ保留しておい
た材料を、始めて紹介しておいた積りである。
一九一七年春、ウヰンにおいて
フロイ ド